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東京地方裁判所 昭和43年(借チ)1034号 決定

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔決定理由〕二、本件資料によれば、申立人は申立外中村光次から、弁済期を昭和三二年三月末日とする金五〇万円の貸金債権の代物弁済として本件建物の所有権を取得するとともに、本件土地の賃借権の譲渡を受け、相手方との間で、昭和三二年五月一日、存続期間を昭和五二年四月末日とする賃貸借契約を締結したこと、右契約には、賃借地内に築造する建物の種類及び構造は平家とし附近に迷惑を及ぼす建物(工場等)は建築せざることという条項があること、右契約に際しては謝礼金として申立人から相手方に金五万円が支払われたこと、本件土地に建てられている申立人所有の本件建物は近い将来に朽廃する状況ではないこと、本件土地は間口は約六米余、奥行は中央が約一二米余であり、間口は幅員四米の舗装された公道に斜めに面しており、右公道の両側の建物は商店が多く、これに混つて個人住宅及びアパートがあり、殆んど二階建の建物で、平家建は少いこと、申立人が計画している本件増改築は建築関係法規上も許される範囲のものであることなどが認められる。相手方の主張するように本件賃貸借契約上は、借地上の建物の種類及び使用目的が倉庫としての使用に限られていたものと認めるに足りる資料はない。すると、申立人の本件増改築は、前記の借地内に築造する建物は平家建とする条項には反するが、本件土地自体の利用上は相当であるといわなければならない。

そこで、本件増改築が近隣に対して及ぼす影響について考えると、本件資料によれば、本件建物は本件土地の北東側の申立外坂入美江ら所有の東京都豊島区堀之内町二二番ノ一八の土地との境界線から0.2米隔たつた位置に建てられており、本件増改築の建物も右の位置に建てられる予定であること、右坂入美江らの所有地にはやはり右境界線に近接して二階建の居宅が建てられていることが認められるので、本件増改築が行なわれて、本件土地上の建物が二階建になれば、前記坂入所有の居宅の南西方向からの日照、通風等が阻害されることが予想される。なお資料によれば、右坂入は昭和三五年四月相手方から前記堀之内町一二番一八の土地を賃借し、さらに昭和三九年一月相手方からこれを買受けたものであることが認められるので、その南西側にある本件土地上の建物が平家建であることを期待するのは無理もないけれども、前記認定の本件土地附近の利用状況等からして、早晩本件土地にも二階建の建物が建てられることになるかも知れないことは予測できたものと推認され、前記認定の本件土地附近の利用状況等から考えて、前記の日照、通風等の阻害は社会生活上受忍すべき限度を超えるものとまではいえないと解する。

なお、相手方は、本件増改築の建物が危険物貯蔵の倉庫として使用されることの危険性を主張するが、申立人は危険物の貯蔵はしない旨述べているし、主文第三項のとおり危険物貯蔵のために使用しないことという借地条件を附することでもあり、また危険物貯蔵等については消防法等による規制を受けるものであるから、右の主張は本件増改築を不相当とする理由にはならない。

三、そこで附随処分の要否等について検討する。

(1) まず財産上の給付については、本件資料によれば、相手方は他に相当の土地を所有していることが認められるので、本件借地関係が現状のまま推移すれば、期間満了によつて借地権が消滅することは殆んどないものと予想されるが、本件増改築によつて、後記のとおり借地契約の存続期間を延長するうえ、建物の朽廃の時期は非常に延びるので相手方の借地上建物の朽廃による借地権消滅の期待的利益は失われ、また申立人が賃借権を譲渡せんとする場合の借地法第九条ノ二第三項による買受価額としては現存の建物より高額の出捐を余儀なくされることも考えられ、一方申立人は本件増改築によつて、本件土地の有効使用を図ることができるとともに、借地権の永続化によつて利益を得るので、この間の利害を調整するため、申立人に相手方に対する財産上の給付として金銭の支払をさせるのが相当である。そこで右の利害を算定するのは困難であるが、本件借地関係の従前の経過、残存期間等の事情を併せ考えると、本件土地の更地価格は鑑定委員会の意見のとおり、3.3平方米につき金二七万円とするのを相当と認め、本件土地全体の価額の約五パーセントに当る金三一万七〇〇〇円を財産上の給付として、申立人をして相手方に対し支払わせることとするのが相当である。

(2) 次に、本件借地契約の存続期間については、本件増改築は全面的な改築であり、これについての許可の裁判が、借地法第七条の土地所有者の異議権に如何なる影響を与えるかについて意見の相違が予想され、当事者間に、存続期間についての紛争が惹起する可能性があるので、これを予防し、本件借地関係の安定を図るため、借地法第二条等の趣旨に従い、今後なお借地権が二〇年間は存続するようにするため、期間を昭和六三年一二月末日まで延長する。

(3) さらに、現在の賃料は低額であるので、鑑定委員会の意見に従い、三三平方米につき一箇月金一〇〇円と定める。

なお、相手方は、本件増改築後の建物が危険物貯蔵の倉庫として使用されると主張するところ、申立人は本件増改築の許可に危険物を貯蔵しないことの条件を附されても差支えない旨述べるので、相手方の危惧を解消するため、本件増改築の建物のうち倉庫には危険物を貯蔵のために使用しないことを借地条件として附することにする。(福嶋登)

(一) 土地

東京都豊島区堀之内町二二番六

宅地 837.28平方米(253.28坪)の内 77.75平方米

(23.52坪)

(二) 借地契約 右土地に対する堅固でない建物の所有を目的とする賃貸借契約

(三) 現存建物

東京都豊島区堀之内町二二番地所在

家屋番号 甲二二番一〇

木造亜鉛メッキ鋼板葺平家建店舗兼居宅工場

床面積 66.34平方米(20.25坪)

(四) 増改築の内容

木造亜鉛鉄板瓦棒葺二階建倉庫兼居宅

床面積 一階 39.825平方米

(12.05坪)

二階 43.065平方米

(13.2坪)

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